
ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」
IGOR STRAVINSKY
THE RITE OF SPRING (Le Sacre du Printemps)
シャルル・デュトワ指揮
モントリオール交響楽団
(ポリドール LONDON F35L-50041)イーゴル・ストラヴィンスキー(1882-1971)はロシアの作曲家で20世紀の始め頃フランスのパリで活躍していました。1913年にパリのシャンゼリゼ劇場で行われた『春の祭典』の初演は大変な騒動を巻き起こしました。
ストラヴィンスキー自身の言葉によれば「前奏曲の第1章節目でただちに嘲るような笑いが起った。私はむかむかして気分が悪くなった。この野次は最初孤立していたがすぐに広まり、支持者たちとの野次の応酬を引き起こしてまたたくまに恐ろしい騒ぎとなった。」
それは、『春の祭典』の原始的で強烈なリズムと不協和音の連続が、多くの聴衆に強い衝撃を与えたことを物語っており、音楽史に残る記念的な日でもありました。
全音階的和声はワーグナーが「トリスタンとイゾルデ」で示した連続した転調による半音階的和声によりすでに限界に達していましたが、ストラヴィンスキーは『春の祭典』で多調性の可能性を示しました。『春の祭典』第1部の「春のきざしとおとめたちの踊り」では、変ホ長調と変ヘ長調の混合になっており同時に鳴らされる異なる2つの調性が作り出す不協和音は民族的リズムをより強調するものとなっています。
ストラヴィンスキーと交友のあったドビュッシーは『春の祭典』を「美しい悪夢」とたとえ、それが音楽に及ぼすある種の破壊的な影響をおそれていたようです。とはいえ『春の祭典』が示した多調性、新しいリズム、構造のブロック化などはその後の音楽に大きな影響を与えるものとなったのでした。今日では現代音楽の古典として、コンサートでもよく取り上げられ、たくさんの録音がCDで発売されています。
録音では、初演者であるピエール・モントゥー指揮/パリ音楽院管弦楽団、現代音楽の作曲家ピエール・ブーレーズ指揮/クリーヴランド管弦楽団などが名演として有名です。
NAGたまのお気に入りの演奏はシャルル・デュトワ指揮/モントリオール交響楽団の演奏です。デュトワはフランス音楽とロシア音楽を得意としており、この『春の祭典』でもデュトワの卓越した管弦楽曲の解釈が現れています。オーケストラも指揮者の要求によく答えており見事なアンサンブルでダイナミックかつ色彩感豊かな演奏を聴かせてくれます。
『春の祭典』の中でNAGたまのお気に入りは「大地の踊り」の部分です。ここは第1部のクライマックスでPrestissimoの速さで5管編成のオーケストラが強烈なリズムで鳴り響く疾走感がたまりません。テレビCMでも使用されたことがあるので聴けば分かる方も多いと思います。ディトワとモントリオール響の演奏はテンポの速い部分でもアンサンブルが乱れることなく明瞭な響きで曲の輪郭がはっきり出ています。曲の最後のフルートの上行型に続くフォルティシシモの部分はバッチリ決まっていて「どうだ!」といった感じです。
[by NAGたま]